だましを見破る:基礎編(3)

さて、前回までの講義では、①特定の投資案件などを勧める人の意図、②表に出る情報(投資案件など)の素性、などに着目してだましを見破る方法を解説しました。今回はだましを見破る方法として更に高度なものになります。

今回は、発信されている情報の内容に着目してだましを見破る基本原則について学びます。

基本原則3.未来は誰にも分らない

当たり前ですが、未来の市場動向は誰にも分りません。そのために、投資には不確定要素が必ずあります。それにも関わらず、投資の世界では、確証のない未来について確定した事実のように話されることが本当に多いので注意が必要です。

この基本原則3から導かれるだましを見破る行動とは、「まだ明らかになっていない未来を前提にしている話には、注意する。」となります。言葉を選ばずに言うと、「未来に対して「確実」をにおわす言葉を使っている投資案件は、全て詐欺。」と断言して良いです。

 

この基本原則からだましを見破るには、少し訓練が必要です。以下によく使われる言葉を示しますので、何が問題なのかを考えてください。

1)この投資は7%の利息が約束されている。

未来の結果である投資のリターンが確証されることはありません。投資先が破綻すれば、利息どころか元金も返ってきません。「絶対に安全」などとの言葉が出てくれば詐欺確定です。

2)この投資の7%の利息は契約で保証されている

1)の発展型です。このパターンは、少し投資の知識を得た初心者投資家をだます手口です。巧妙なものが多いので注意が必要です。ある条件でのみ成り立つ数字を使い、「契約」として未来が保証されているように見せるだましです。

例1.証券会社が勧める現地通貨建ての高利回りの国債
確かに現地通貨建てで7%の利息を履行される可能性は高いです(100%ではないです!)。しかし、未来の現地通貨の円建てでの価値は誰にもわかりません。現地通貨の円建ての価値が下がると当然7%の利息は消えます。多くの人が未来の約束にだまされる良い例です。(詳細は、投資の基礎知識の講義で説明します。)

例2.不動産の利回り
不動産の表面利回り7%!なども良い例です。たしかに賃料は契約で決まります。しかし、7%の利回りを生む家賃で未来永劫借りる人がいる保証はどこにもありません。(表面利回りが、あなたの期待する実際の利回りでないことについては投資の基礎知識の講義で説明します。)

3)今まで例外なく7%の利息が支払われた。この投資は安全である。

これも1)の発展型です。詐欺になるので「契約」と言えないので、過去の実績でごまかします。2)に比べてより初心者向けのだましの手口です。過去の事実から未来を予測しているので正しいように聞こえます。しかし、だまされてはいけません。過去の実績と未来は何も関係ありません。「最初は約束通り利払いされ、突然元金ごと行方をくらます。」は、詐欺の定番です。

例1.金融機関でない主体が発行する投資商品(最も注意すべき商品です。)
ポンジスキームと言われる詐欺の仕組みがこれに該当します。詳細は別途解説しますが、簡単に仕組みを説明します。ポンジスキームでは、利回りの良い投資案件があると高い利率を約束してお金を集めます。そして、最初に集めたお金の利子を次に集めたお金で払います。この最初の利払いで信用を築き、更にお金を集めます。

しかし、集めた元金で利払いをするのでいずれ破綻します。そして、大きなお金を集めた時点で逃げます。現在は、お金を集めていた会社を倒産させて、利払い・元金返済から逃げるケースが多いです。

とにかく、金融機関でない主体が発行する投資商品は、詐欺と考えてください。どのような仕組みであっても、金融機関以外が広くお金を集める投資商品にお金を出してはいけません。

なお、ポンジスキームの詐欺は巧妙なため一度でも接触してしまうとだまされます。あらゆる手段を使ってこの手の話から逃げて関わらないようにしてください。

4)この不動産は10年後に1.5倍の値段になる。

指摘するまでもないです。10年後の不動産の市場状況を予想できる人はいません。更に、その不動産の価値を維持するためにどれだけお金が必要かなど全くわかりません。「値段が1.5倍」と「利回り50%」には大きな違いがあります。

いかがでしょうか。

この「未来は誰にもわからない。」という基本原則のレンズで世界を見ると、世の中に多くのウソがあふれているのが見破れるようになります。ただ、このレンズの精度を向上させるには、日々の練習が必要となります。このレンズの精度向上の講義は、継続して行う予定です。

それでは、皆様の安全で豊かな生活を応援します。